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平成29年第3回3月楢葉町議会定例会町長施政方針説明要旨

公開日:2017年03月07日

平成29年3月6日

 それでは、平成29年第3回3月楢葉町議会定例会にあたり、各議案の審議に先立ちまして、私の町行財政運営に当たっての施策の一端を申し述べます。

 東日本大震災と原発事故からまもなく6年を迎えるとともに、平成27年9月5日の避難指示解除から1年半が経過をいたしました。この間、議会議員の皆さまをはじめ、国や県など関係者の皆さまのご尽力、そして町民の皆さんの活動に支えられ、復興が形となって現れてまいりました。心より御礼を申し上げます。

 さて、昨年4月に行われた町長選挙において多くの町民の皆さんのご支持をいただき、引き続き2期目の町政を担わせていただくこととなりました。町民の皆さんからの期待に応えていくためにも、初心を忘れることなく、全力で町政に邁進してまいります。

 2期目の1年目となる今年度は、「復興・創生元年」と位置づけ、町民の皆さんが安心して帰町できる環境の整備と、元気な楢葉の姿の県内外への発信に全力で取り組んでまいりました。

 新生ならはプロジェクトとして進めている北田中満地区の「笑ふるタウンならは」における災害公営住宅の建設は順調に進み、すでに一部の引渡しが始まりましたが、6月の全戸引渡しに向け、順調に工事が進捗しております。竜田駅東側も、企業宿舎が今月中に竣工するとともに、ビジネスホテルも近く着工が予定されるなど、新しい町の拠点となる姿が着実に見えてまいりました。

 観光においては、6年ぶりとなるサマーフェスティバルの開催ほか、様々なイベント等を開催し、町内外から多くのお客様が訪れるとともに、観光拠点であるしおかぜ荘の新源泉の掘削にも成功し、サイクリングターミナルと併せ利用客も徐々に伸びてまいりました。

 農業においては、20ヘクタール規模ではありますが出荷を目的とした稲作を再開し、収穫した2,867袋全てが放射性セシウムの出荷基準値未満となり、来年度からの規模拡大に向けてまずはしっかりと安全が確保されていることが証明されました。また、肉用牛の飼育や原乳の市場への出荷が再開されるなど、農業再生の確かな一歩をふみ出すことができました。

 水産業においては、楢葉の宝である木戸川の鮭ふ化施設が復旧し、鮭稚魚育成も本格的に再開するとともに、鮭いくらの加工品の販売も震災前と変わらぬ好評をいただき、木戸川の再生に自信を深めることができました。

 雇用や新産業においては、南工業団地や北部産業団地での企業立地の決定や操業開始が続き、再生可能エネルギーや医療産業など、イノベーション・コースト構想の受け皿として産業再生が着実に進んでおります。

 町民のコミュニティにおいては、行政区において花植えや美化活動などが始まるとともに、町内でもまなび館を中心に趣味の活動の輪が広がりました。また若者を中心としたグループが自発的に盆踊りや音楽イベントに取組むなど、町に活気と明るさが増えてまいりました。

 生活環境においては、除染廃棄物の中間貯蔵施設への本格運搬の開始、並びに仮設焼却施設の稼働に伴い可燃物の運び出しが始まり、安心して生活していただくための環境回復が着実に進みました。

 昨年9月に町制施行60周年の節目を盛大に迎えることができ、町民が心を一つに、楢葉町を後世へ着実に引き継ぎ、発展させていくことを誓いました。記念事業として京都清水寺の森清範貫主、東進ハイスクールの林修先生、ノーベル賞を受賞された東京大学梶田隆章教授といった各界の著名な方々の講演会を開催し、大変好評をいただきました。

 

 さて、いよいよ今年の春は町復興計画で示す帰町目標の時期を迎え、町の復興のステージは本格復興期に移行いたします。全ての町民の生活再建と、新生ならはの創造に向け、これからが正念場となってまいりました。

 まず、仮設・借上げ住宅の供与期間が、来年3月で終了することが決定しております。いまだ約3割の世帯が供与期間終了後の住居が決まっていないとの調査結果から、早期に新しい住居を確保していただけるよう、相談体制の充実などしっかりとした支援を行っていくとともに、仮設住宅の集約化などにも着手していかなくてはなりません。

 また、4月から町内で小中学校を再開いたしますが、来年度以降も継続して新入生を確保していくためには、魅力ある教育環境を用意するだけではなく、子育て世代が楢葉で生活をしたい、楢葉に移住したいと思っていただけるような居住環境の整備をさらに進めていかなければ、町の衰退に一層拍車がかかることは避けられません。

 しかしながら、町の財政状況を見ますと、財政指標は国の支援等により概ね健全な状況を確保しておりますが、人口の減少が見込まれる中、未だ産業の復興が半ばであること、被災者の生活再建の観点から各種減免措置の継続が必要であることから、自主財源の大きな伸びは期待できないものと考えております。また将来、福島第二原子力発電所の廃炉が決定された場合、町財政へ大きな影響を与えることが予想されます。来年度には新たな財政計画を策定いたしますが、これらの想定を踏まえながら財政の健全運営を図るとともに、一方では国からの交付金等を積極的に活用し、復興に必要不可欠な今しか出来ない事業には、基金の活用も含め大胆に投資を行うことで、この正念場を乗り切っていかなくてはならないものと考えております。

 以上、申し上げたことを踏まえ、平成29年度予算案を「本格復興スタートダッシュ予算」として編成を行いました。

 今回、特に新生ならはの実現に寄与する新規事業を「新生ならは創造枠採択事業」として、町の復興基金も活用して2件の事業を設けました。

 一つは、「子育て世帯等住宅取得支援事業」であります。町民、又は町外から移住される子育て世帯等が町内に住宅を新築する際に、1世帯あたり100万円を支給し、町内の定住人口の増加に繋げていくものであります。

 もう一つは、「こども園外国語指導事業」であります。あおぞらこども園に外国人講師を配置し、幼児教育の段階から英語に親しむ機会を設けることで、世界に羽ばたく子どもを育てていくものであります。

 いずれの事業も、町の将来を担う子どもたちを町全体で支えていく観点で事業化したものであります。

 その他、主要な事業につきましては、これまで重点政策として掲げてきた「教育」と「農業」、そして「自立の実現」に重点を置いて編成をいたしましたので、町復興計画の施策区分に従って順次ご説明いたします。

 まず、「暮らしやすさを追求する」取り組みであります。

 この春再開する小中学校において、学習支援の塾を開設するとともに、情報通信技術を取り入れた最先端の遠隔授業を実施するなど、日本一の教育環境を目指し、教養豊かな子どもを育ててまいります。

 町民の期待が高い商業共同店舗は、用地造成に引き続き建設に着手をし、来年春の開業を目指します。

 町内移動のためのタクシー補助制度を創設し、帰町された町民の利便性を確保いたします。

 プレミアム付商品券を発行し、町内で再開した事業者の支援と商業の活性化を図ってまいります。

 次に、「これまで・現在とは違う新しさを目指す」取り組みであります。

 いきいきアグリ復興基金を造成し、やる気のある営農者を手厚く支援するとともに、カントリーエレベータや育苗施設の建設に着手し、効率的な農業経営環境の効率化を図ります。また、企業とタイアップしたサツマイモの実証栽培を開始し、新しい農業の形を戦略的に構築いたします。

 町民の意見を取り入れながら基本コンセプトを策定した、ならは交流館の建設に着手をし、商業施設と併せてのオープンを目指します。

 サマーフェスティバル、あるこう会、イルミネーションの開催のほか、ゆずの里ロードレースを7年ぶりに復活し、町民と町外の観光客等がともに楽しめるイベントを通し、交流人口の拡大を図ってまいります。

 再生可能エネルギーを町内の施設に導入するスマートコミュニティの構築に着手をし、新エネルギーへの転換を発信してまいります。

 次に、「更なる安全・防災を目指す」取り組みであります。

 一升平佐野線をはじめとした町道の道路改良を進め、町内での車両通行量の増加に対応し、道路ネットワークの確保を図るほか、子どもを交通事故から守るため道路へセーフティゾーンの設置等を進めてまいります。

 特別警戒隊によるパトロール事業を継続するほか、イノシシ等鳥獣被害防止のための捕獲事業を強化いたします。

 防火水槽の新設や消防自動車の更新を行い、防災体制を強化いたします。

 次に、「絆を保ち、被災生活を乗り切る」取り組みであります。

 仮設住宅等にお住まいの方の生活支援相談を継続するとともに、仮設住宅等を退去された世帯に生活再建給付金を交付し、自立した生活を支援してまいります。

 楢葉に帰町される方に補助金を交付し、移転にかかる費用負担を軽減し円滑な帰町に繋げてまいります。

 コミュニティ再生に繋がる心の復興事業を継続して実施するほか、行政区に対する補助を増額し、町内の美化活動等を通じた町民同士の交流の再生を図ります。

 最後に、「安心して暮らせる環境を作り出す」取り組みであります。

 放射線モニタリングや仮置き場の監視、町民の追加被ばくの低減に向けた取り組みを継続して行い、安心の確保に努めてまいります。

 高齢者等に対する緊急通報システムの貸出しや、自家用飲料水の安全を確保するための補助事業を継続して行います。

 以上、平成29年度予算案の主要な施策について申し上げました。


 さて、全町避難が続く4町のうち、3月31日に浪江町、4月1日は富岡町において帰還困難区域以外の避難指示が解除されることが決定いたしました。国の支援政策もこれら解除区域に重点が置かれることが想定されますが、富岡が良くなれば楢葉はさらに良くなる、富岡で足りないものは楢葉で補完する、といった相乗効果を求めていかなくてはなりません。政府は、福島の原発災害からの復興に対しては最後まで責任を持って取り組む、と約束しておりますが、その履行を確実にし、後に続く町の復興の希望となるためにも、楢葉町は復興のフロントランナーとしての立場を自覚し、走り続けていくことが求められております。

 町行政だけではなく、町民、事業者など、それぞれの立場により、それぞれが描く復興の絵姿は異なるとは思いますが、ともに力を合わせていかなければ、そのゴールにたどり着くことはできません。町行政といたしましても、あえて高い目標を掲げ、挑戦する攻めの姿勢を貫いていくことで、多くの方々から共感と応援を得ることができるとともに、町民の皆さまにも復興の果実を実感していただけるものと考えております。

 新生ならはの創造に挑戦し続けていくこと、これが私に課せられた使命であるとの覚悟を持って、今後ともふるさと楢葉の復興、再生に取り組んでまいりますので、議会議員の皆さま、そして町民の皆さまのご支援、ご協力をいただきますようお願い申し上げまして、私の施政方針とさせていただきます。