メニューを飛ばして本文へ

楢葉町

緊急・災害情報

組織別に探す

令和4年第3回3月楢葉町議会定例会町長施政方針説明要旨

公開日:2022年03月07日

 東日本大震災・福島第一原子力発電所の事故から、11年が過ぎようとしております。

「10年ひと昔という言葉がこれほどまでに実感できず、どこかむなしく響くほど、今日ここに至るまでのあゆみは、落ち着くことなどゆるされない、その時々で最良の判断を強いられる薄氷を踏む思いの連続だったといえます。私たちにとって東日本大震災・福島第一原子力発電所の事故は、過ぎ去った過去の出来事としての歴史にはなっておらず、今まさに進行している課題であると思うのです。

 加えて、一昨年から続く全世界を覆うコロナ禍は、まさに前例のない行政運営の連続であった本町に非情なまでに追い打ちをかけていることはいうまでもありません。

 しかしながら、私たちは打ちひしがれて流れに身をまかせるのではなく、困難に直面すればその都度、前を向き立ち上がり果敢にあゆみを進めてまいりました。

 この10年、町中に播かれたさまざまな復興の種が芽吹き、大きな希望の花を咲かせています。「笑ふるタウンならは」や「ならはスカイアリーナ」において、子どもたちや元気なお年寄りのみなさん、さらには多くの来町者が集い賑わう光景を日常のこととして取り戻すことができました。こうした何気ない毎日こそ、私たちが望み、ひと昔前には望んだところでかなわないと思った夢だったのではないでしょうか。

 そして、このような状況に至ることができましたのも、車の両輪に例えられ共に復興を推し進めてこられた町議会議員の皆様をはじめ、町民の皆様、国や県その他数多くの関係者のご理解とご支援、そして職員の努力によるものと、それぞれに深く感謝するものであります。


 昨年を振り返りますと、新型コロナウイルス感染症の影響により世界中が混乱している状況ではありましたが、延期になった「東京2020オリンピック」の聖火リレーが本町からはじまり、8月にはギリシャ大使をお迎えするなど、本町の魅力を内外へ発信することのできた年でありました。

 また、町制施行65周年記念式典を開催し、食文化史研究家の永山久夫氏を名誉町民として顕彰し、さらには各界でご活躍中の12名の方々を「NARAHAアンバサダー」に任命し、町のさらなる魅力発信にご貢献いただいているところであります。

 新型コロナウイルス感染症対策では、本町でも昨年5月からワクチンの集団接種が始まり、現在、3回目の接種も順調に進んでおります。社会経済活動が正常化に向かうなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことに期待感が高まっていくことは当然であり、感染拡大を防止し、生命及び健康を守りながら社会経済活動を両立させるため、町としても引き続き、新型コロナウイルス感染症対策に力を傾注する考えでおります。


 さて、全国的にみて、令和4年度も地方自治体を取り巻く行政課題は、例外なく複雑、高度さらには多様化したことを受け、各自治体ともに厳しい行財政運営を強いられ続けているものと思われます。

 このような状況に加え、「笑顔とチャレンジがあふれるまち」を将来像とする第6次町勢振興計画を始動させ、この先10年の新たな未来を見据え舵をきった本町としては、現実としていまだ復興の途上にあることも考えあわせますと、さらに厳しい行財政運営が求められている現状であるといえます。


 以上を踏まえ、令和4年度における国・県の動向を踏まえた本町の基本的な方針を申し上げます。


 昨年、戦後最悪の落ち込みを経験した世界経済は、再び前に向かって動き出しています。ウクライナ問題が世界経済及び我が国に対してどう影響するかは未知数でありますが、今後は、単なる景気回復にとどまらず、カーボンニュートラルの実現に向けた動き、デジタル化やデータ活用の急速な進展、国際的な取引関係や国際秩序の新たな動きなど、世界全体の経済構造や競争環境に大きな影響を与える変化がダイナミックに生じるだろうとみられています。

 我が国に眼を転じると、人口動態としては少子高齢化が一層進み生産年齢人口の減少が問題となるなか、新型コロナウイルス感染症による厳しい影響から国民の命と暮らし、雇用を守ることや激甚化する災害への対処など、今後も国に対しては、諸課題への対策と世界的規模への急速かつ大きな変化に、スピード感をもって対応することが求められています。

 岸田内閣は、決してデフレには戻さないとの決意をもって、経済をコロナ前の水準に早期に回復させるとともに、成長分野で新たな雇用や所得を生み、多様な人々が活躍する「成長と雇用の好循環を目指しております。当面は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に引き続き万全を期すほか、厳しい経済的な影響に対して雇用の確保と事業の継続、生活の下支えのための重点的・効果的な支援策を講じ、国民の命と暮らしを守り抜くとしております。

 国の令和4年度予算編成では、成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現に向けて、国民を守る医療提供体制や検査体制の確保、変異株を含む新たなリスクに対する万全の備えのためのワクチン・治療薬等の研究開発、雇用・事業・生活に対する支援等を推進していくこととしております。また、同時に、「経済あっての財政」との考え方の下、財政健全化に向けしっかりと取り組むとしており、新たな成長分野への重点投資、民間の資金・人材の活用等により経済成長を促すことや、国と地方の役割分担の見直しを含め、経済・財政の一体的な改革を引き続き推進するとしております。


 次に、福島県においては、新たな総合計画の初年度として、引き続き力強い復興と福島ならではの地方創生を更に前に進めていくスタートの年と位置づけているものの、台風や地震などの自然災害に加え、新型コロナウイルス感染症対策など広範かつ膨大な財政需要が見込まれるとされております。

 歳入においては、新型コロナウイルス感染症による地域経済への影響により法人事業税や地方消費税を中心に大幅な減少が見込まれるとともに、地方交付税を始めとした地方財政対策など国の動向を注視しつつ財源確保の取組が必要とされており、歳出においては、地域住民等の声・ニーズを施策に適切に反映させることができるよう現場主義を徹底することとし、既存事業をゼロベースで総点検し、組替え・再構築するなど、例年以上にスクラップ・アンド・ビルドを徹底するとしており厳しい財政見通しを示しております。


 このような国・県の状況の中、本町では社会保障関係経費の増加や新たな施設に要する維持管理費の増加などにより、財政の硬直化が深刻化しており、その対策も急務となっていることに加え、震災、原発事故、コロナ禍を起因とした税収などの減少により、引き続き自主財源の確保が厳しい状況にあります。

 このような財政見通しに留意しつつ、令和4年度においては新たな復興・財政両戦略のもと、第2期復興・創生期間の2か年目として重点施策に集中的に取り組むことを最優先とし、「新生ならは」実現のために必要な施策に、限られた財源を有効かつ重点的に配分する予算編成を行うことといたしました。

 また、当該施策の加速化を図るため、所定の要件を満たした部署に対し「新生ならは創造枠」として引き続きインセンティブ予算を配分する予算編成といたしました。

 なお、厳しい財政状況の中で復興・創生を成し遂げるためには、復興基本方針を踏まえた遺漏なき財源確保はもとより、財政運営戦略や公共施設等総合管理計画を用いた行政マネジメントが必要となることから、義務的経費を除いた経常的経費の削減を図るとともに、震災以前からの通常事業については、町民サービスの維持確保を図りつつ、ゼロベースからの事業縮減・廃止など、徹底した見直しに努めました。


 以上、申し上げたことを踏まえ編成した令和4年度予算案について、主な事業や取組内容を第6次楢葉町勢振興計画の基本目標の区分に沿ってご説明いたします。


 はじめに、「基本目標1 町民が主体的に取り組む、参加のまち」であります。

 震災後大きく変化した地域コミュニティについて、活動の活性化を図りながら、「町民号事業」等を行うことで町民同士のつながりを維持いたします。また全国に居住する本町出身者との交流や連携の場として「ふるさと福島楢葉会」を発足させ、外からまちづくりへの助言や支援を行う応援団の確保にも取り組んでまいります。

 そして今年度から行っていた移住・定住促進に係る事業には更に力を入れ、情報発信を広く行いながら、まかない付シェアハウスの運営や、新たな交流拠点の整備、また各種補助制度を充実させ、若者や子育て世代が住みやすい、住みたくなるまちづくりを展開してまいります。

 さらに、これまで以上に地域おこし協力隊を充実させ、学生のインターンとしての採用を行いながら、民間企業の社員を地域活性化起業人として地域の魅力向上に従事していただくとともに、新たに特定地域づくり事業協同組合を発足させ、雇用の場の創出を図ってまいります。


 続いて、「基本目標2 学びを楽しみ、「ちから」と豊かさにつなげるまち」であります。

 本町の重点施策の一つでもあります教育については、これまでも実施しているキャリア教育を継続するとともに、放課後・長期休暇等学習支援、ICTを取り入れた最先端の教育等、町独自の取組を継続的に展開してまいります。

 また令和4年度は南北小学校を統合して楢葉小学校として始まる初年度であり、改めて、日本一の教育を目指す場として魅力ある教育となるよう努めてまいります。

 さらに、令和4年度の機構改革に伴い新たに「生涯まなび課」を組織し、生涯学習活動の活性化を図りながら、文化財の保護・調査や楢葉市民大学等を継続しつつ、東京大学総合研究博物館との連携により新しい博物館を運営開始いたします。


 続いて、「基本目標3 誰もが元気に、はつらつと暮らすまち」であります。

 健康増進とスポーツの振興も重点施策の一つであり、これまでも行ってきた元気アップ教室、ウォーキング事業等を継続しながら、心と身体の健康づくりに取り組んでまいります。

 また楢葉町スポーツ協会内に設立したスポーツコミッションにより、スポーツを通じた地域振興を推進しながら、Jヴィレッジ、スカイアリーナ、総合グラウンド、天神岬スポーツ公園など町内の充実したスポーツ環境と各種観光資源を活かし、町内外から人を呼び込むスポーツツーリズムを推進してまいります。


 続いて、「基本目標4 助け合い支え合う、みんなにやさしいまち」であります。

 ここでは町民全員が参画する「地域共生社会」の実現を目指し、保健福祉の各計画推進や、地域包括ケアシステムの深化・推進を図りながら、男女共同参画の推進にも取り組んでまいります。

 また安心して出産・子育てできる社会環境の構築として、子育て世代包括支援センターを中心に子育て世帯を支援しながら、令和4年度から新たに放課後児童クラブを開始し、保護者の働きやすい環境づくり及び放課後児童の健全育成を推進してまいります。

 さらに従前の出産祝金に加え、コロナ禍において負担が増している子育て世帯を対象に臨時特別出産祝金を給付することで、生活での安心・安全の確保に努めてまいります。


 続いて、「基本目標5 地域資源・人材が輝く、にぎわいのまち」であります。

 重点施策3本柱の一つである農業の再生については、森林再生事業や営農再開に向けた取組みを引き続き推進してまいりますが、令和4年度は新たに農林水産物処理加工施設を整備することにより、まちの基幹産業である農業の更なる活性化を図ってまいります。

 また廃炉産業に参入するモデル企業への補助金給付等を行いながら、変化に対応した産業の育成・支援を継続的に行ってまいります。

 さらに、これまでもご好評頂いているプレミアム付き商品券事業を実施し、暮らしを豊かにする商業の活性化を進めてまいります。

 そして、サマーフェスティバルや秋空散策あるこう会といった事業も継続しつつ、包括協定を締結した株式会社モンベルと連携し、天神岬スポーツ公園のアウトドア拠点としての改修にも着手いたします。さらに岩沢海水浴場についても災害復旧工事が完了し、今夏12年ぶりに再開となる運びであります。このことにより、またひとつ本町の地域資源が輝きを取り戻すものと期待をしております。


 続いて、「基本目標6 暮らしやすく、安全・安心なまち」であります。

 小学校の通学路安全確保として延木戸・袖山川原線や月山寺後・菖蒲平線の道路改良を行うことに加え、観光施設へのアクセスとして重要路線である中満・天神岬線の道路改良を行う等、各種補助金を活用しながら計画的に整備を進めてまいります。

 また環境問題への取組促進として、リサイクルハウスの更なる活用や町民による環境美化活動の推進を図りながら、SDGs推進のための講演会等を実施いたします。

 さらに震災後継続して行っている特別警戒隊によるパトロールや防犯カメラ事業も引き続き行いながら、ハザードマップの更新や防災備蓄倉庫の基本計画策定にも着手し、町民の安全・安心な暮らしの確保に努めてまいります。


 町勢振興計画の基本区分に則った主な事業は以上となりますが、これ以外にも「ならはチャレンジプロジェクト」として様々な事業に着手しつつ、新型コロナウイルス感染症対策に係る事業者支援等、町民・事業者に寄り添った町政運営となるよう取り組んでまいります。


 さて、震災から間もなく、ひとまわり、12年目に入ろうとしております。令和4年の情勢については、復興後に加速度的に進んだ人口と税収の減少は、避けがたい課題として顕在化しておりますが、課題がはっきりと認識できれば対処すべき方策も考えることができると思います。もちろん簡単なことではありませんが、あの震災と原子力発電所事故を乗り越えてきたことを思えば、一歩づつであれ進むことはできると考えております。

 さきほども触れましたが、昨年末、株式会社モンベルと包括連携協定を締結させていただきました。こうした取組みによって、本町の原風景となる海、山、川などの自然の特性が、関係人口や交流人口の拡大と町民生活の質の向上につながると確信しておりますし、人々の交流から生まれる活力・生きがい・つながりをベースとして、「多様な人が長期間関与し、ライフスタイルが満たせる町」という新たな町の将来像につながるものと考えております。

 また、繰り返しになりますが、令和4年度は南北小学校を統合し、新生「楢葉小学校」が誕生します。かねて進めておりました「日本一の教育」実現のために、さらなる魅力あふれる教育を実践してまいります。そして、町としても、町民みんなで次世代を担う子どもたちを育てるという考えのもと、従来の教育総務課等を再編統合することで、あらたに「こども課」を設置し、子どもたちや子育て世代を応援する体制を構築します。さらには、学校教育、幼児教育のみならず、生涯学習分野の再構築を図り、「生涯まなび課」を組織し、幅広い世代の生涯学習活動の活性化を目指したいと考えております。


 人は、あまりにも途方もないことに対峙するとその大きさに眼を奪われてしまうことがあります。私たちの場合も同じことが言えるのではないでしょうか。ですが、「千里の道も一歩から」の例えどおり、心萎えることなく歩む私たちの一歩一歩が「新生ならは」をつくる大きな一歩となることを信じ、そして本町の興廃は、この先の10年を見すえた人々の思いが鍵になるとの信念のもと、しっかりと意見を聞き、着実なる行財政運営を担ってまいりたいと思います。


 あらためまして、議会議員の皆様、そして町民の皆様のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、令和4年度の施政方針とさせていただきます。

このページに関するお問い合わせ先

総務課

〒979-0696 福島県双葉郡楢葉町大字北田字鐘突堂5-6
電話:0240-23-6100

お問い合わせ