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令和2年第3回3月楢葉町議会定例会町長施政方針説明要旨

公開日:2020年03月09日

令和2年第3回3月楢葉町議会定例会 町長施政方針説明要旨

令和2年3月9日 

はじめに

 本日、令和2年第3回3月楢葉町議会定例会の開催にあたり、各議案の審議に先立ちまして、私の町政運営に対する基本的な考え方と主要な施策の概要を申し上げます。

 東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故から間もなく9年、避難指示の解除から4年半が経過いたしました。これまでの間、本町の復旧・復興に対しまして、議会議員の皆様、そして町民の皆様に、多大なご理解とご協力をいただいておりますことに、改めて心より御礼を申し上げます。

 避難指示解除以降、住民の皆様の生活環境を整備することを最優先に復興業務を進めてまいりました。昨年度に整備いたしました「笑ふるタウンならは」内の商業施設「ここなら笑店街」と交流館「ならはCANvas」には、これまでになかった新たな賑わいが生まれております。
 また、昨年4月には、屋内体育施設「ならはスカイアリーナ」がオープンし、双葉郡復興のシンボルである「Jヴィレッジ」もグランドオープン、さらには「Jヴィレッジ駅」の開業、「道の駅ならは」温泉保養施設の再開など、昨年は復興の進捗が顕著に現れた1年でありました。中でも「ならはスカイアリーナ」は、町民の皆様の健康づくりに活用するとともに、Jヴィレッジ等と連携し、「スポーツのまち楢葉」の再生と振興を目指すうえで重要な役割を担っており、町外からも多くの方にご利用いただいています。
 このように、町が賑わいを取り戻しつつある中、町内に帰還される方も少しずつ増加し、町内居住者は2月末現在で3,927人、居住率はこの1年間で約5%の増加を見せ、57.8%まで回復してまいりました。町内外からの移住・定住の受け皿として整備した「笑ふるタウン」内の分譲宅地でも、住宅等の建設が日に日に進んでおります。
 さらに、今月にはJR常磐線が全線再開し、Jヴィレッジ駅が常設化されます。これに伴って、Jヴィレッジへの来訪者が増大することが予想され、その近隣である「道の駅ならは」でも6月中旬には物産館が再開を予定しておりますことから、今後の交流人口拡大に大いに期待しているところであります。

令和2年度の町政運営の基本的な考え方

 このように、町は近年、町民の皆様が安心して町に戻ることができる環境整備を第一に進めるとともに、これまでにはなかった楢葉の新しい魅力の創出を図ってきたところであります。
 令和2年度におきましても、これまでの取り組みを持続、進化させながら、以下の3点を重点施策として町政を運営してまいりたいと考えております。

 1つ目は「教育の充実」であります。
 未来を担う子どもたちは、文字通り「町の宝」であります。これまでも重点的に取り組んでまいりましたが、未来を生き抜く力を十分に身に付けることができるよう、引き続き、町独自の取り組みを進め、多くの方に「楢葉で子どもに教育を受けさせたい」と思っていただける、日本一の教育環境を創出してまいります。

 2つ目は「農業の再生」であります。
 基幹産業である「農業の再生なくして楢葉の復興は無い と常々申し上げているとおり、何としても楢葉の原風景を取り戻してまいりたいと考えております。今後も、農業者の皆さんの営農再開を支援し、農地の集積と農業経営の効率化を進めるとともに、サツマイモを中心とする新たな作物への挑戦を継続して実施してまいります。

3つ目は「健康増進とスポーツの振興」 であります。
 Jヴィレッジやならはスカイアリーナをはじめ、町内には設備の整った運動施設が豊富にあります。健康は人々の幸福の根幹をなすものでありますので、町民の皆様にこれらの施設を活用し、元気で生き生きと過ごしていただくよう取り組んでまいります。
 また、合宿の利用誘致やスポーツツーリズム事業などによる、交流人口の拡大にも努め、「スポーツのまち楢葉の再生と振興」を目指してまいります。

令和2年度予算編成にあたって

 続きまして、令和2年度予算編成について申し上げます。
 本町の財政状況は、国の支援等により財政指標は概ね健全な状況を確保しておりますが、人口の減少が見込まれることや、産業の再生が未だ途上であること、町民の生活再建の観点から各種減免措置を継続する必要があることなどから、自主財源の大きな伸びは期待できないものと予測されます。また、福島第二原子力発電所の廃炉が決定し、将来的に町財政に影響等が及ぶことは必至であり、引き続き、健全な財政運営に努めていかなければならないと考えております。
 その一方で、町民の更なる帰還促進と人口回復のためには、震災前以上の行政サービスを提供していかなければならないと考えており、復興に資する事業には、国からの交付金等に加えて基金も積極的に活用し、大胆に投資を行っていくことも必要であると考えております。

 以上、申し上げたことを踏まえながら令和2度予算案を編成し、一般会計予算の総額は、95億1,900万円となり、前年度より20.2パーセントの減となっております。
 また、特別会計は5会計で28億5,689万7千円となり、全会計では123億7,589万7千円の予算規模としたところであります。

令和2年度主要事業の概要

 それでは、新年度の主な事業や取り組みについて、楢葉町復興計画の主要施策の区分に沿ってご説明申し上げます。

 はじめに、「暮らしやすさを追求する」取り組みであります。
 「新生ならは の創造に向けた重点施策の一つでもあります教育については、昨年度から実施している中学校のキャリア教育を継続するとともに、放課後・土曜日等の学習支援、産学官連携によるプログラミング教育、ICTを取り入れた最先端の教育など、町独自の取組みを継続的に展開してまいります。
 そして、町内に居住されている方の買い物環境を支えるため、公設商業施設であります「ここなら笑店街 をしっかりと運営してまいります。各地区と商業施設を結ぶ「お買いものバス」も継続して運行し、町内のタクシー補助制度も継続し高齢者の交通手段を確保いたします。
 平成29年度から実施している「プレミアム付商品券」は、住民の皆様にも好評でありますので、引き続き発行し、町内で再開した事業者の支援と商業の活性化に努めてまいります。
 さらに、今年6月中旬、「笑ふるタウン」内には、町が整備し、一般社団法人 福島県復興支援薬剤師センターが運営母体となる、公設民営の「ならは薬局」が開業する予定でありますので、生活環境がより一層、向上するものと期待いたします。
 また、平均寿命が延伸している現代においては、高齢になっても、それぞれの役割を持ちながら生き生きと暮らし続けられるまちづくりが求められます。高齢者の孤立防止と介護予防のため、各行政区で地域ミニデイ等を引き続き開催するなど、生きがいづくりと一体となった健康づくりの体制を強化してまいります。

 続いて、「これまで・現在とは違う新しさを目指す」取り組みであります。
 昨年オープンした「ならはスカイアリーナ」を最大限有効に活用し、町民の健康増進はもとより、合宿利用の誘致やスポーツコミッション事業に着手し、「スポーツのまち」としてより多くの方に来訪していただける機会を創出してまいります。
 聖火リレーのスタート地として、ますます大きな注目を集めるJヴィレッジと連携し、様々なイベントを実施するとともに、常設化されるJヴィレッジ駅の駅前広場の整備や、「道の駅ならは」物産館の営業再開など、Jヴィレッジ周辺エリアの活性化を図り、交流人口の拡大に努めてまいります。
 基幹産業である農業の再生については、イノシシ等の鳥獣被害防止や農地の集積を図って営農再開の支援を進めるとともに、新たな作物として挑戦しているサツマイモについては栽培面積を50haまで拡大し、一大産地を目指してまいります。
 また、東京大学総合研究博物館と連携し、貴重な収蔵品の展示を行うため、旧商工会館の一部を改築し、歴史資料館分館として整備することとしており、子どもたちの興味も集めることのできる施設になるものと期待をしております。
 このように、ハード面の復旧復興が概ね整ってきた今、町の課題は人口の回復にあると考えております。移住促進に関する検討を進めながら、若い世代の町内への定住を促すため、新婚世帯に補助を行う「結婚新生活支援事業 、楢葉町に住宅を取得した子育て世帯等への「子育て世帯等住宅取得奨励金」の支給を継続するとともに、東京圏から企業等に就業する方に補助を行う「移住支援事業」を展開してまいります。
 サマーフェスティバル、秋空散策あるこう会、イルミネーションなど、恒例となったイベントも引き続き開催し、町の賑わいづくりと魅力の発信に努めてまいります。

 続いて、「さらなる安全・防災を目指す」取り組みであります。
 昨年の台風19号等で被害のあった林道グダ・水無線の災害復旧を行うほか、災害非常用の備品購入や防災訓練の実施により、災害に強い人づくり・まちづくりを行い、町民の安全・安心の確保に努めてまいります。
 森林が有する多面的機能を維持しながら放射性物質の低減及び飛散防止を図るため、原発事故により荒廃した森林の再生にも引き続き取り組んでまいります。

 続いて、「絆を保ち、被災生活を乗り切る」取り組みであります。
 町内の居住者は、間もなく6割に達しようかという状況となっております。現在、一部の行政区では広報紙等の配布にご協力をいただいておりますが、震災以前のような地域のつながりを再生していくため、より多くの行政区に拡大できるよう支援してまいります。
 その一方、様々な事情により、今なお町外で生活する町民とのつながりも維持していくため、広報紙等の送付を継続してまいります。
 コミュニティは心の大きな支えであり、住民の生活再建に欠かすことができません。地域コミュニティ等の維持・再生のため、町民の主体性を引き出しつつ、行政区のコミュニティ活動を支援し、「心の復興事業」を継続して行政区や民間団体が行う地域活動を支えてまいります。

 続いて、「安心して暮らせる環境を作り出す」取り組みであります。
 住民の皆さんが町内で安心して生活するうえでは、利便性が高く安全な交通を確保することが必要です。今年度、着工いたしました町道波倉線の道路改良事業を引き続き継続し、早期の事業完了を目指すほか、町内での車両通行量の増加に対応し、道路ネットワークの確保を図るため、中満・天神岬線をはじめとした町道の改良を進めてまいります。
 竜田駅周辺の開発については、今年夏ごろの橋上駅舎完成に向けて、駅前広場や東西自由通路の整備を継続してまいります。また、竜田駅西側につきましても、引き続き住民参加型のワークショップを開催しながら、まちづくりを進めてまいります。
 また、安心して生活できるということを理解していただくためには、放射線モニタリングや仮置場の監視を継続して行い、結果をわかりやすく公表していくことが重要です。
 さらに、「新生ならは」の創造に向けた重点施策である「健康増進 については一層の強化を図ることとし、ならはスカイアリーナの機能をフルに生かした健康づくり事業等により生活習慣病の予防などに取り組んでまいります。

結びに

 以上、令和2年度の主要施策の概要について説明させていただきました。

 令和2年度は、東日本大震災から10年目となる節目の年であり、復興・創生期間の最後の1年となります。政府は、福島の復興については「復興・創生期間後も引き続き国が前面に立って取り組む と明言し、当面10年間の支援を約束しております。
 しかし、楢葉町は全町避難した自治体の中で最も早く避難指示が解除された町であります。私は以前から、職員に対しても、最後の1年を「復興の総仕上げの年」と捉えて、復興・創生期間内にできることを全てやりきるスピード感をもって取り組むよう指示してまいりました。今ここで新しい楢葉町の礎をしっかりと築かなければ、10年先、20年先、さらには廃炉作業が完了する数十年先に、楢葉の明るい未来を描くことはできません。私たちには、楢葉で生まれ育った子どもたちに、彼らが心から誇りに思えるような町を残し、次の世代に引き継いでいく責任があります。
 また、楢葉町には、いわば双葉郡の復興のモデルタウンとしての位置づけがあることも忘れてはならないことです。後に続く町の希望となるためにも、復興のフロントランナーとして、減速することなく全力で走り続けていかなければなりません。安心安全はもとより、町民が暮らしやすいと感じることができるまちづくりを求め続け、さらには、これまでにはなかった新しい魅力を生み出し、ふるさと楢葉に根づかせてまいりたいと考えております。
 さて、楢葉の復興はさまざまな施策によって概ね順調に進んでおりますが、人口の減少や若い世代の居住率の低迷といった、解決すべき課題が残されていることも事実であり、依然として緊張感をもって「新生ならは」というゴールを目指さなければなりません。
 そのゴールへの道のりは遠く、局面は複雑ではありますが、方向性や方策を判断する基準は意外と単純なものであり、「町民の皆さんが喜ぶか。幸福につながるか」ということではないかと考えております。職員一人一人も、町民の皆さんに喜んでいただけることを念頭に置きながら業務を遂行し、町民の皆さんとともに「オール楢葉」となって、楢葉の復興を成し遂げてまいります。

 今後とも、議会議員の皆様、そして町民の皆様のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、令和2年度の施政方針とさせていただきます。